遺言には主に自筆証書遺言と公正証書遺言の二つの方式があります。当事務所が、生前対策のご相談で原則として公正証書遺言をおすすめしているのには、相応の理由がございます。

I公正証書遺言と自筆証書遺言の違い

両者の最大の違いは、「相続発生後に揉める余地が、どれだけ残るか」という点にあります。

自筆証書遺言は、ご自身の手で書いて押印するだけで作成できる手軽さがあります。一方で、要式の不備(日付漏れ、押印漏れ、訂正方法の誤りなど)により無効となるリスクが拭えず、また、相続人間で「本当に本人が書いたものか」「書かされたのではないか」といった遺言能力や偽造をめぐる争いが生じやすい性質があります。さらに、家庭裁判所での「検認」手続が必要となり、相続人にとって負担となります。

公正証書遺言は、公証人と証人2名の立会いのもとで作成され、原本が公証役場に保管されます。要式の不備で無効になることはまずなく、検認も不要です。「ご家族に余計な争いを残さない」という観点では、これに勝る方式はございません

Reference 費用の目安:公証人手数料は、遺産の目的価額に応じた段階制で計算されます(令和7年10月1日施行の公証人手数料令改正後)。たとえば、目的価額1,000万円超3,000万円以下で本体手数料2万6,000円、3,000万円超5,000万円以下で3万3,000円、これに遺言加算1万3,000円が加わります。

自筆証書遺言の保管制度:自筆証書遺言については、令和2年(2020年)7月10日から法務局による保管制度が始まっています(京築地方なら福岡法務局行橋出張所が窓口)。1通3,900円で保管でき、改ざん・紛失のリスクが回避できるうえ、家庭裁判所の検認も不要です。形式チェックも受けられるため、自筆で残されたい場合の有力な選択肢になります。

II公正証書遺言を残すべき方の類型

特に公正証書遺言を残すことを強くおすすめしたいのは、次のような方々です。

Point 特に重要なのは、「家族仲がよいから揉めない」とは限らないということです。配偶者の関与、相続人の経済状況の変化、ご家族の世代交代など、相続発生時の状況は予測できません。遺言は、万が一の局面でご家族の関係を守る、最後の置き土産です。

III遺言があっても安心できないとき

公正証書遺言を残しても、なお注意すべき論点がございます。

第一に、遺留分です。配偶者、子、直系尊属には、遺言によっても侵害できない最低限の取り分(遺留分)が認められています。「すべて長男に」という遺言を残しても、他の相続人から遺留分侵害額請求がなされれば、長男は金銭で代償する必要が生じます。設計の段階で、遺留分への配慮が欠かせません。

第二に、遺言執行者の指定です。執行者を定めていないと、遺言の内容が決まっていても、不動産の名義変更や預金の解約に、相続人全員の協力が必要となる場合があります。揉めごとの予防という観点では、信頼できる執行者(弁護士を含む)を指定しておくことが望ましいと考えております。

IV作成までのおおよその流れ

当事務所で公正証書遺言の作成をご依頼いただいた場合の、おおよその流れをご紹介します。

  1. 初回ご相談(ご家族構成、財産状況、ご希望の確認)
  2. 遺言案の作成・ご検討(遺留分・税務面の論点を併せて検討)
  3. 公証人との事前調整
  4. 公証役場で作成(証人2名は当事務所で手配可能。なお、推定相続人・受遺者・これらの配偶者・直系血族は証人になれません〔民法第974条〕ので、ご家族には依頼できません)
  5. 正本・謄本のお渡し、原本の保管

ご相談から作成までは、おおよそ1か月から2か月程度を見込んでいただければ十分です。お急ぎの場合は、より短期間での対応もご相談に応じます。

In Conclusion
残されるご家族のために、いま、できること。

遺言は、ご自身のためではなく、残されるご家族のために残すものです。
「まだ早い」「自分が亡くなった後のことは考えたくない」──そう感じられる時期にこそ、最も良い遺言が書けます。判断能力に問題が生じてからでは、遅すぎることもございます。
京築のご家族のために、いま、できることを。当事務所はそのお手伝いをさせていただきます。

監修 弁護士 細川 大介(福岡県弁護士会所属/登録番号 第61505号)
本コラムは、執筆時点の法令・実務に基づいております。法令改正等により最新情報と異なる場合がございますので、個別具体的なご相談は当事務所(担当弁護士・細川)までお問い合わせください。
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